OIKAWA,Satoko blog

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
trackback: -- | comment: -- | edit

ヘンリー・ダーガー 

久しぶり、本当に久しぶりに美術手帖を買った。
特集が「ヘンリー・ダーガー」だったからである。

ヘンリー・ダーガーはアウトサイダー・アートの代表的な作家のひとりとされ、誰に見せることもなく、小さなアパートにひきこもったまま、『非現実の王国で(IN THE REALMS OF THE UNREAL)』という名の1万5000ページにも渡る「少女戦士たちの大人との戦い」を描き上げた人。私の憧れの人の一人である。





(B.Tの中では会田誠さんややなぎみわさんなどが、文章を寄せていているが、私としては、ぜひ、ここは楳図かずおさんにも寄稿してほしかったと思うのだった)

ダーガーがAsperger syndromeの傾向を持っていたのではないかという可能性について、まだ誰も指摘したのを見たことがないのだが、私は彼の生涯を読むたびに、そうだったのではないかと思わずにはおれない。
…といって、だからどうだ、ということもないのだけれど。アウトサイダー・アートという枠だって、意味があるような、ないようなものだろうし。

瑞々しい色彩をたたえ、増殖する少女たちの肢体。
禍々しさと、イノセンスさが、完全に同居する世界。
繊細な鉛筆の線、宝物として集められた切り抜き。
誰に見せる為でもなく、築き上げられた王国。

私もそんな王国に住まえるものなら、と思う。
閉じられるだけ閉じた中で、
妄想を完結させられるならば、
どんなにか幸福だろうと思う。

私は幼少期、ダーガーが描いたような残酷な絵物語を描いたことがある。酷く痛めつけられた無垢な子供を、薔薇の騎士が助ける冒険物語。その内容が、特に悪いとも思わなかった私は、親にその絵を見せた。そして、叱られた。なぜ、こんな物語を描くのかと詰問されたことも覚えている。
叱られるのは倫理的な指導として分かるけれど「なぜ、描くのか」という質問には、どうしたって答えられなかった。それは今も同じだ。なぜ描いたのか、なぜそんな物語が思い浮かんだのか、その理由は謎のままだ。そして、そういう思いを浮かべることは、「叱られることだ」と私は学び、そして社会化されたのだと思う。

その子供の時の私は、こっそり、今も心に残っているのだろう。恐怖小説、恐怖映画、それら残酷さの中から立ち現れる純粋さや無垢さに、なぜか心惹かれてしまう。そして、そういった「現実離れした世界」にこそ、自分の心の住まい、安定があるように思えてならない。
サスペリアのテレビ広告に魅入られたのは小学校1年生だったし、棺に納められた白雪姫を繰り返し妄想したのは、もっと幼い頃だったろう。「叱られる」以前、自然発生的に、なぜ、自分がそういった物語を紡いだのか、そう欲望したのか、その答えは全く分からない。

わからないまま、私はダーガーの絵物語を読み、心深く、震えるのだ。

ヘンリー・ダーガー
少女たちの戦いの物語 ー夢の楽園ー

2007 4/14 - 7/16
原美術館

コメント

久しぶりにヘンリー・ダーガーの名前を見ました。
会田誠の名前も。
好きだけど大っぴらに言いにくい作家の一人です。
子どもの前では言えません。

こま #79D/WHSg | URL | 2007/04/26 22:06 * edit *

こまさん
子供の前では言えませんね。
大人の前でも言えません。
こまさんの前では言えると知ったので、
今夜はとても嬉しいです。

聡子 #79D/WHSg | URL | 2007/04/26 22:29 * edit *

少女だらけの漂流教室ですね。
ヘンリー・ダーガーさん。

miyuki #79D/WHSg | URL | 2007/04/27 01:39 * edit *

miyukiさん
ね、少女だらけの漂流教室ですよね。おお、漂流教室読み返したいです。
楳図さんの場合「母親」が大きな要素であることが多いです。漂流教室も、関谷をはじめ、酷い大人がたくさん出てきますが「お母さん」は絶大な愛情で主人公を支えています。
ダーガーにとって「お母さん」に代わる存在が信仰であり、マリア様だったのでしょう。マリア様の愛情もまた、絶大です。絶大ですが、それは「個別的な愛情」ではないように、絵物語からは感じられます。少女たちはとにかく山ほどいるんですから(主人公だって7人もいるし)。
漂流教室が成長物語であるのに対し、非現実の王国には成長はありえない、ということも、個別的な愛の欠如と共に、大きな相違で、その点がまさに、ダーガーの精神をひも解く鍵のように思われます。

聡子 #79D/WHSg | URL | 2007/04/27 08:08 * edit *

恥ずかしながら、名前を聞いたのは初めてでした。でも、絵は見たことがあります。漂流教室ですか・・・なるほど、それと共通する部分もあるんですね。 

WIND #79D/WHSg | URL | 2007/04/27 12:46 * edit *

ヘンリー・ダーガー、友達に教えてもらってネット上の画像で見たことしかないんですが、大好きです。
ゾクゾクします。

カリノ #79D/WHSg | URL | 2007/04/27 13:08 * edit *

WINDさん
これからお父さんになろうという方が、
積極的に見てはいけないかもしれません。
本当に。
カリノさん
ダーガーの部屋の写真もあるのですが、
ご覧になったことありますか?
きっと、ゾッコンになられることと思います。
展覧会7月までやっているので、
私はどうにか上京して、
本物を見てみたいと思っている所です。

聡子 #79D/WHSg | URL | 2007/04/27 13:14 * edit *

H.ダーガーの孤独なアパートの一室(非現実の王国)で書き綴られた
1万5千頁にたゆたう7人のヴィヴィアン姉妹…。
ゴミ溜めの中の宗教画や雑誌・新聞広告などから切り抜かれた
コラージュ少女戦士たち。
そのアニメーションがYOUTUBEで一部見られます。
(少女のナレーションが印象的です)
http://www.youtube.com/watch?v=LHkHKmkBGnk
私の場合は、ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」を訳していた紙片を母親に見られて、
どうしてこんな詩を書くのか、とたしなめらたことがあります。
訳だと知って安心した様子でしたが。
(ケーテ・コルビッツの絵に、子供が死神を見ようとするのをスカートの中に押し込めて
必死に拒もうとする母親が描かれていたのをフト思い出しました。
ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』のオスカル少年はスカートの中を世界としたのでしたが…)
いずれにしろ、施設や病気から“逃げ出し続けた”ダーガーの制作風景と
その死後に残された作品の風情は圧倒的に我々を撃つものがあります。
「アスペルガー症候群」説、興味深いですね。

ALGOS #79D/WHSg | URL | 2007/05/01 01:28 * edit *

一つ落としてました。
こちらの方が、予告編的で面白いです。
ダーガーの部屋もチラと見られます。
ヴィヴィアン・ガールズも、一層リアル…?
http://www.youtube.com/watch?v=Cud2HHLWnmc&mode=related&search=
ご存知でしょうが、アマゾンにDVD出てますね。
http://www.amazon.co.jp/Realms-Unreal-Ws-Dol/dp/B00094ARX2/ref=sr_1_1/250-8849480-2253807?ie=UTF8&s=dvd&qid=1177953139&sr=1-1

ALGOS #79D/WHSg | URL | 2007/05/01 02:14 * edit *

ALGOS先生
ありがとうございます!アニメーション見ました!
わが家は未だにナローバンドなので、4分足らずの動画を読み込むのになんと20分かかりました 涙。
アスペルガー症候群の3大特徴とされているものに「想像力、創造性の欠如」というものがあります。私はこの特徴には承服しかねます。最近ではゴッホ、カンディンスキーといった美術家、ヴィトケンシュタイン、アインシュタインなど、哲学者や科学者にも、アスペルガー症候群に当てはまる可能性が示唆されてきています。
ダーガーの場合、雑誌からの転写、コラージュなどの点が絵画としての制作として妥当かどうか、などと言われることもあるようです。
この「蒐集、転写」という点を、絵画手法としてどう捉えるかが、同時にアスペルガー症候群(ひいては自閉症者全体)の「想像力と創造性」をどう見ていくかのポイントになるように思います。

聡子 #79D/WHSg | URL | 2007/05/02 08:58 * edit *

「蒐集・転写・コラージュ」を絵画として妥当な手法でないとすると、
バタバタと大御所の「アーティスト」が消えていくでしょうね。
(ま、消えてもらっても私は構わない方もおられるようですが…!)
AspSyn.の属性が「想像力と創造性の欠如」だとするならば、
ダーガー氏の仕事の背後にそんな病は存在しないことになりますね。
かつて「漱石発狂」の報が流れたことを倫敦で知った夏目氏は曰く
「我を狂人と言わば言え。狂気によってこそ『文学論』を仕上げたのだから、
我輩はその狂気にこそ感謝せねばならない」と。
漱石という人格とその作品を精神分析で辿る道筋も確かにありますけれど、
漱石を味わうこととは、どこか違うものを感じます。
ダーガーの場合は、どうなんでしょうねェ…。

ALGOS #79D/WHSg | URL | 2007/05/04 04:45 * edit *

ALGOS先生
ここらへんのことは、あまりに私の中で大きな問題すぎて、コメントにてお返事するにはむずかしいです。
代わりに、日本のアスペルガー当事者として有名で、翻訳家のニキ・リンコさんのサイトをご紹介いたします。
http://homepage3.nifty.com/unifedaut/
アスペルガー症候群のような発達障害者を「宇宙人」に例え、定型発達者を「地球人」と例えて、宇宙人の側からメッセージを、という設定のサイトです。このサイトの中の「生存権の部屋」http://homepage3.nifty.com/unifedaut/seizonken.htm
も是非、読んでいただけたら幸いです。

聡子 #79D/WHSg | URL | 2007/05/08 20:50 * edit *

「大きすぎる問題」とのこと、
了解しました。
ご紹介サイト早速拝見。
興味深い角度からの説得力を感じました。
有難うございます。

ALGOS #79D/WHSg | URL | 2007/05/09 21:51 * edit *

ALGOS先生
いつか、また、この「大きすぎる問題」について、まとめたいと思っています。
私が敬愛してやまないアスペルガー症候群当事者であるテンプル・グランディンさんの一連の著作も、興味深く、さまざまな発見に満ちています。
「今、指を鳴らせば、自閉症が治ると言われても、私は指をならさないでしょう」と言うテンプルさん。それは漱石の言葉にも通じる所があるように思います。

聡子 #79D/WHSg | URL | 2007/05/11 09:04 * edit *

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://skycastle07.blog105.fc2.com/tb.php/245-ca069cf8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

ネタばれ注意「ヘンリー・ダーガー展」

先週の火曜日、デザイン・フェスタを終えて京都へ帰る途中に原美術館で「ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語-夢の楽園」展を鑑賞しました。諸事情により書くのが遅くなりましたが、感想を書きます。 この展覧会は7月16日(月・祝)まで同館で開催中です。いま詳

I my me gallery blog | 2007/06/04 10:54

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。