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クリスティーン ジョン・カーペンター監督 


クリスティーン

制作年 1983 初公開年月 1984/05/
原題 CHRISTINE
製作国 アメリカ
監督: ジョン・カーペンター
原作: スティーヴン・キング
脚本: ビル・フィリップス
出演: キース・ゴードン
  アレクサンドラ・ポール
 ジョン・ストックウェル

※ホラー話ですので苦手な方はご注意

先日、クリスティーンを再読したので、映画も見てみようか、と思った次第。「ゼイリブ」はかなり好きな映画なので、ジョン・カーペンター監督のクリスティーン、どんな風なのか少し期待していたのだけど…。ダメです。原作を愛している人は見るとがっっっっっかりすることだろう。

原作では老人ルベイの「やむことのない怨念」がクリスティーンに禍々しい能力を与える。そのルベイのエピソードを、映画ではすっかりカットしている。そして、クリスティーン自身が、最初から超現実的な能力を持った車だった、という設定にされてしまっている。この点が、根本的に、絶対的に、ダメです。ルベイの怨念とアーニーの思春期の鬱屈が重なり合って悲劇を生んでいく様が、クリスティーンという物語の厚みであるのに、ルベイが消されてはもともこもない。

また、キャラクターがちっとも活きていない。アーニーもデニスもリーも、原作ではもっと魅力的で互いに対して誠実である。会話も知的で思いやりに満ちている。(デニスの俳優、ジェリー藤尾に似ている)互いを大切に思っているからこそ、アーニーの変貌が悲しく、また恐ろしいのに、あれじゃダメだ。ダーネルだって、原作じゃもっと恰好良い魅力的なワルなのだ。キングの作りだすキャラクターは、どんな端役でもそれぞれに人間的な魅力が与えられている。なのに、映画のキャラクター達は端役はもちろん、主要人物さえも空っぽ過ぎる。(とはいえ、アーニー役のキース・ゴードンは、好演だった。彼の異様さがこの映画で唯一、不吉な印象を与える要素になっているかと思う。)

原作と映画は違うのはかまわない。映画として面白ければそれでいいと私は思う。「ホラーだし、B級映画なんだから、これで充分面白い」という意見もあるかと思う。でも、ホラーも好きで、B級映画も好きな私としては、まさにその点においてこの映画は駄作だと思う。ホラーなのに少しも怖くないし、B級映画特有の「逸脱した思い入れ」がちっとも感じられないのだもの。

キングの描写は実に細やかで具体的だ。文章表現として、充分に視覚的なので映像化するには、それ以上の映像的解釈を与えないと原作を越えることは出来ない。(映画だけ見た人には、あのクリスティーンが自分で治っていくシーンが面白く見えるかもしれない。確かにちょっと面白いけど、原作を読んでいて浮かんでくるシーンの迫力はあんなものじゃないのだよ。)

キングの恐怖の描写で、私が特にぞっとするのは「嗅覚」の表現である。異様な匂い、腐臭、死臭などという言葉が頻繁に出てくる。これが、生理的嫌悪感と不安感を読者に与え続ける。修理され、新しく張り替えられたカバーの下から漂う「古い匂い」「腐臭」が、原作のクリスティーンには漂っている。そして、それはアーニー自身も気づいている。この辺りがゾワゾワと怖い。
「微かな匂い」というのは距離を表す。微かな匂いを感じる時、それは自分の「すぐ側」にあるものから漂っているはずだからだ。クリスティーンに乗り込むと感じる微かな腐臭は「彼女」と自分との親密な距離を感じさせるし「彼女」に包まれていることを感じさせる。クリスティーンの腐臭によって、生理的で性的な不快感を絶えず味わうことになる。
映画には、これら「嗅覚」の描写は一切出てこない。この点も、読書中味わう、あの肌から染み透ってくるような恐怖に、映画が少しも及ばない理由のひとつだと思える。

ガソリンスタンドでの炎上シーンを評価する人もいるけれど、私には、地味なストーリーに花を与えないとな、ということで作ったシーケンスに思える。クリスティーンの怖さは、外側からだけで捉えてはいけないのだ。クリスティーンが女性なのだから。見た目云々で近づいたにせよ、本当にそのおぞましさを感じるには、近づいて、乗り込んで、中に入り込む、という関係に落ちなければいけない。映画には、クリスティーンの車内のシーンがあまりに少ない。これは、この映画のスタッフが、クリスティーンと結局のところ「深い付き合い」にならなかったとこの証に思えてならない。

深いつき合いをしなくちゃ、切なさも、愛おしさも、そして恐怖も味わえっこない。

原作の小説「クリスティーン」の感想はこちらです。

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