OIKAWA,Satoko blog

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いつもどおりなんてない。 

愛犬は実に早起きで、4時を過ぎたころにはベランダに出たいと鼻を鳴らし始める。
私も彼女のそんな体内時計に慣らされて最近は5時前にいったん目が覚める。「早く」という彼女に促されて布団から身をはがしベランダのサッシに手をかける。彼女はガラスに鼻を押し付け、まだかまだかと急いて、肩すれすれに通るくらい開いたら即ダッシュ。私は布団に戻るのである。

キジ、きつね、猫、早起きの老人、…と我が家の前に広がる空き地には彼女の好奇心を引きつけるものが次々やって来る。朝もやの向こう、ガサガサと動く者たちを見つけてはベランダを右左駈ける彼女の足音を夢うつつ聞く。ケン、ケーンとキジの声。

ある朝、いつものようにベランダを開けて布団にもどると、早朝だというのに目が圧迫されるほどの光を感じた。何事かと目を開けると空が白金に光っていた。「プラチナ雲だ!」と思った。プラチナ雲は強い風のためか、朝日の向こうまでパースを利かせ、ドラマチックに流されている。一気に意識が覚醒した。

「見て良かった」と思うことなんて、意外と少ない。私は出不精だから特にそう。オーロラだってグランドキャニオンだって吉野の桜だって、その気になれば見ることはできるし、きっと感動するんだろう。良い展覧会も映画も、足しげく通えば出会うこともある。でも、身近な景色が壮絶に綺麗な瞬間に出会うことはそれらとは違う感動をもたらす。
日常だと侮っていたものたちが、びっくりするような姿を見せる時、私は足下をさらわれたように感じる。空や雲や土、石など「それだ」と思っていたものが見ず知らずのモノのように押し寄せる。何も見ていなかった自分に気づかされる思いだ。

彼女は日がな一日、お気に入りのベランダと縁側で外を眺めている/嗅いでいる。よっぽど面白いのか飽きることなど無いらしい。最近はキジがお気に入り。大きいし、ぎりぎりまで飛ばないから、いつの日か捕まえる気でいる様子。謎なのはヘビ。見つけてはどうしようかと思案に暮れている。「怖い怖いだからね」との教育的指導のおかげか、本能のなせる技かあれほど何でも捕まえたがる彼女もヘビだけは遠巻きに見つめるのみである。
キジやヘビは彼女にとってかなりのイベント。きつねともなれば大イベントだ。私も相当大喜び。頭の中にさだまさしの曲が流れ始める。けれど、彼女の凄いのは、散歩の同じルートだっていつも新鮮らしいところだ。日々是大イベントらしい。その気になれば、平凡なものなど無いのかもしれない。全てを平凡にしているのは答えをあてがう私の頭だ。

ベランダでしっとりぬれた鼻をクムクムさせている彼女を抱きしめる。彼女はいつものことだと私を無視し、なおも空気の中から大量の情報をキャッチしている。「何見てるの~?」と聞いても彼女は教えてくれない。私は彼女の頭に鼻を押し付けて十円玉みたいな匂いを嗅いで楽しませてもらうより他ないのである。
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